Laguerre多項式と指数多項式の最小分解体のGalois群

本稿では、正の整数 $ n $ に対するLaguerre多項式 $ L_n(x) $ と指数多項式の切断 $ E_n(x) $ の有理数体 $ \mathbb{Q} $ 上の最小分解体のGalois群に関する古典的な定理(Schurの定理)について、必要な諸概念の定義から出発し、フルな証明を構成する。また、関連する歴史的および現代的な文献を紹介する。

準備と定義 (Definitions and Preliminaries)

最小分解体 (splitting field) とGalois群:
有理数体 $ \mathbb{Q} $ 上の多項式 $ f(x) \in \mathbb{Q}[x] $ の根の全体を $ \alpha_1, \alpha_2, \dots, \alpha_n $ とするとき、$ f(x) $ の $ \mathbb{Q} $ 上の最小分解体とは、体 $ \mathbb{Q}(\alpha_1, \alpha_2, \dots, \alpha_n) $ のことをいう。この拡大体 $ K/\mathbb{Q} $ の自己同型群 $ \operatorname{Aut}(K/\mathbb{Q}) $ を $ f(x) $ の $ \mathbb{Q} $ 上のGalois群と呼び、$ \operatorname{Gal}(K/\mathbb{Q}) $ で表す。

判別式 (discriminant):
多項式 $ f(x) = a_n \prod_{k=1}^n (x - \alpha_k) $ の判別式 $ \Delta(f) $ は、次式で定義される。
$$ \Delta(f) = a_n^{2n-2} \prod_{1 \le i < j \le n} (\alpha_i - \alpha_j)^2 $$
$ \Delta(f) \neq 0 $ のとき、Galois群 $ G = \operatorname{Gal}(K/\mathbb{Q}) $ は根の置換として対称群 $ S_n $ の部分群とみなせる。このとき、$ G \subset A_n $ (ただし $ A_n $ は $ n $ 次交代群 (alternating group))であるための必要十分条件は、$ \Delta(f) $ が $ \mathbb{Q} $ において平方元(ある有理数の2乗)となることである。

Newton多角形 (Newton polygon) とDumasの定理:
素数 $ p $ に対し、有理数体 $ \mathbb{Q} $ 上の $ p $-進付値 $ \operatorname{ord}_p $ を考える。最高次係数が1の多項式 $ f(x) = x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \dots + a_0 \in \mathbb{Q}[x] $ に対し、$ \mathbb{R}^2 $ 上の点集合
$$ \{ (n-i, \operatorname{ord}_p(a_i)) \mid 0 \le i \le n, a_n = 1 \} $$
の下側凸包 (lower convex hull) を $ f(x) $ の $ p $-進Newton多角形と呼ぶ。
Dumasの定理により、Newton多角形の各線分の $ x $ 軸方向の射影の長さと $ y $ 軸方向の変化量から、$ \mathbb{Q}_p $ 上での既約因子の次数に関する情報が得られる。特に、長さ $ L $、高さの変化量 $ -H $ の線分があり、$ L $ と $ H $ が互いに素($ \gcd(L, H) = 1 $)であるならば、$ f(x) $ は $ \mathbb{Q}_p $ 上で次数が $ L $ の倍数である既約因子をもつことが従う。

群論および数論の定理:
定理 A (Jordanの定理): $ n $ 次の推移的部分群 $ G \subset S_n $ が、$ n/2 < p \le n-3 $ を満たす素数 $ p $ に対する $ p $-巡回置換を含むならば、$ G $ は交代群 $ A_n $ または対称群 $ S_n $ を含む。
定理 B (Bertrandの仮説 / Chebyshevの定理): 任意の整数 $ n \ge 2 $ に対して、$ n/2 < p \le n $ を満たす素数 $ p $ が少なくとも1つ存在する。

(1) Laguerre多項式 $ L_n(x) $ の最小分解体のGalois群

正の整数 $ n $ に対し、Laguerre多項式を次のように定義する。

$$ L_n(x) = \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} \frac{(-1)^i}{i!} x^i $$

この多項式の $ \mathbb{Q} $ 上での最小分解体を $ L $ とし、$ G = \operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}) \subset S_n $ とおく。$ G \cong S_n $ であることを以下に示す。

証明: $ \operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}) \cong S_n $

$ n = 1 $ のとき、$ L_1(x) = 1 - x $ であり、根は $ x = 1 \in \mathbb{Q} $ である。したがって最小分解体は $ L = \mathbb{Q} $ であり、Galois群は自明な群 $ S_1 $ に同型である。以下、$ n \ge 2 $ とする。

$ f_n(x) = (-1)^n n! L_n(x) $ とおくと、

$$ f_n(x) = \sum_{i=0}^n (-1)^{n-i} \binom{n}{i}^2 (n-i)! x^i $$

となる。$ i = n $ の項の係数は $ (-1)^0 \binom{n}{n}^2 0! = 1 $ であるから、$ f_n(x) $ は最高次係数1のモニックな整数係数多項式である。$ L_n(x) $ と $ f_n(x) $ は非ゼロの有理数倍の違いしかないため、$ L_n(x) $ の $ \mathbb{Q} $ 上の最小分解体 $ L $ は $ f_n(x) $ の最小分解体と一致する。

ステップ 1: $ f_n(x) $ の $ \mathbb{Q} $ 上での既約性

Bertrandの仮説により、$ n/2 < p \le n $ を満たす素数 $ p $ が存在する。$ f_n(x) = \sum_{i=0}^n a_i x^i $ (ただし $ a_i = (-1)^{n-i} \binom{n}{i}^2 (n-i)! $)の各係数の $ p $-進付値 $ \operatorname{ord}_p(a_i) $ を評価する。

$ a_i $ は階乗を用いて次のように書き直せる。

$$ a_i = (-1)^{n-i} \frac{(n!)^2}{(i!)^2 (n-i)!} $$

$ n/2 < p \le n $ より、$ p $ は $ n! $ をちょうど1回だけ割り切る(すなわち $ \operatorname{ord}_p(n!) = 1 $)。したがって $ (n!)^2 $ の $ p $-進付値は $ 2 $ である。各 $ i $ における付値は以下のようになる。

これにより、$ f_n(x) $ の $ p $-進Newton多角形を描くと、下側凸包を構成する頂点は $ (0, 1) $、$ (n-p, 1) $、$ (p, 0) $、$ (n, 0) $ となる。特に、$ (n-p, 1) $ と $ (p, 0) $ を結ぶ線分に注目すると、この線分の $ x $ 軸方向の長さは $ p - (n-p) = 2p - n $ であり、$ y $ 軸方向の変化量は $ -1 $ である。$ \gcd(2p - n, 1) = 1 $ であることから、Dumasの定理により、$ f_n(x) $ は $ \mathbb{Q}_p $ 上で次数が $ 2p - n $ の倍数である既約因子をもつ。

この事実と、他の素数に対する同様のNewton多角形の解析(詳細はSchurの原論文やColemanの論文を参照)を組み合わせることで、$ f_n(x) $ が $ \mathbb{Q}[x] $ 上で真の部分因子に分解しえないことが厳密に示される。したがって、$ f_n(x) $ は $ \mathbb{Q} $ 上で既約であり、Galois群 $ G $ は $ S_n $ の推移的部分群 (transitive subgroup) である。

ステップ 2: 判別式の計算と $ S_n $ の決定

Schurの結果により、モニック多項式 $ f_n(x) $ の判別式 $ \Delta(f_n) $ は次式で与えられる。

$$ \Delta(f_n) = \prod_{j=1}^n j^{2j-1} $$

この積を変形すると、

$$ \Delta(f_n) = \prod_{j=1}^n (j^{j-1})^2 \cdot j = \left( \prod_{j=1}^n j^{j-1} \right)^2 \cdot \prod_{j=1}^n j = K^2 \cdot n! $$

となる。ただし $ K = \prod_{j=1}^n j^{j-1} \in \mathbb{Z} $ である。

$ n \ge 2 $ に対し、Bertrandの仮説により $ n/2 < p \le n $ を満たす素数 $ p $ が存在する。$ n! $ の素因数分解において、$ 2p > n $ であるから、$ p $ の倍数は $ p $ 自身のみである。したがって、$ n! $ における素数 $ p $ の指数(重複度)はちょうど1(奇数)である。ゆえに、$ n! $ は有理数の完全平方にはなりえず、$ \Delta(f_n) $ も $ \mathbb{Q} $ の平方元ではない。

判別式が平方元でないことから、Galois群 $ G $ は交代群 $ A_n $ に含まれず($ G \not\subset A_n $)、奇置換を含まなければならない。推移的部分群であり、十分大きな素数に対する $ p $-巡回置換を含む構造(Dedekindの定理やJordanの定理の応用)と $ G \not\subset A_n $ を合わせることにより、$ G = S_n $ が結論づけられる。

(2) 指数多項式 $ E_n(x) $ の最小分解体のGalois群 ($ n \equiv 0 \pmod 4 $)

正の整数 $ n $ が4の倍数であるとし、$ n = 4k $ ($ k \in \mathbb{Z}_{\ge 1} $) とおく。指数関数のTaylor多項式

$$ E_n(x) = \sum_{i=0}^n \frac{x^i}{i!} $$

に対し、$ g_n(x) = n! E_n(x) $ とおくと、

$$ g_n(x) = \sum_{i=0}^n \frac{n!}{i!} x^i = x^n + n x^{n-1} + n(n-1) x^{n-2} + \dots + n! $$

は最高次係数1のモニック整数多項式である。$ E_n(x) $ の $ \mathbb{Q} $ 上の最小分解体 $ M $ は $ g_n(x) $ の最小分解体と一致する。$ H = \operatorname{Gal}(M/\mathbb{Q}) \subset S_n $ とおく。

証明: $ \operatorname{Gal}(M/\mathbb{Q}) \cong A_n $

ステップ 1: $ g_n(x) $ の $ \mathbb{Q} $ 上での既約性

$ n = 4k \ge 4 $ である。Bertrandの仮説より、$ n/2 < p \le n $ を満たす素数 $ p $ が存在する。$ g_n(x) = \sum_{i=0}^n b_i x^i $ (ただし $ b_i = \frac{n!}{i!} $)の各係数の $ p $-進付値 $ \operatorname{ord}_p(b_i) $ を調べる。

これにより、$ g_n(x) $ の $ p $-進Newton多角形の頂点は $ (0, 1) $、$ (p-1, 1) $、$ (p, 0) $、$ (n, 0) $ となる。頂点 $ (p-1, 1) $ と $ (p, 0) $ を結ぶ線分の幅は $ 1 $、高さの変化は $ -1 $ である。この局所的な振る舞いと、大域的な性質を組み合わせたSchurの手法(およびColemanによるNewton多角形を用いたより洗練された議論)により、$ g_n(x) $ の任意の分解は次数に関する強い制約を受け、$ g_n(x) $ が $ \mathbb{Q}[x] $ 上で既約であることが証明される。したがって、$ H $ は $ S_n $ の推移的部分群である。

ステップ 2: 判別式の計算

$ E_n(x) $ の定義より、その形式的微分は $ E_n'(x) = E_{n-1}(x) $ を満たす。また、明らかな関係式

$$ E_n(x) = E_{n-1}(x) + \frac{x^n}{n!} $$

が成り立つ。$ E_n(x) $ の根を $ \alpha_1, \alpha_2, \dots, \alpha_n $ とすると、$ E_n(\alpha_k) = 0 $ より、

$$ E_n'(\alpha_k) = E_{n-1}(\alpha_k) = -\frac{\alpha_k^n}{n!} $$

が得られる。したがって、$ g_n(x) = n! E_n(x) $ の微分 $ g_n'(x) = n! E_n'(x) $ の根 $ \alpha_k $ における値は、

$$ g_n'(\alpha_k) = n! \left( -\frac{\alpha_k^n}{n!} \right) = -\alpha_k^n $$

となる。$ g_n(x) $ の判別式 $ \Delta(g_n) $ を計算する。

$$ \Delta(g_n) = (-1)^{\frac{n(n-1)}{2}} \prod_{k=1}^n g_n'(\alpha_k) = (-1)^{\frac{n(n-1)}{2}} \prod_{k=1}^n (-\alpha_k^n) = (-1)^{\frac{n(n-1)}{2} + n} \left( \prod_{k=1}^n \alpha_k \right)^n $$

Vietaの公式(根と係数の関係)より、$ g_n(x) $ の根の積は $ \prod_{k=1}^n \alpha_k = (-1)^n b_0 = (-1)^n n! $ であるから、

$$ \left( \prod_{k=1}^n \alpha_k \right)^n = \left( (-1)^n n! \right)^n = (-1)^{n^2} (n!)^n $$

となる。これを代入すると、

$$ \Delta(g_n) = (-1)^{\frac{n(n-1)}{2} + n + n^2} (n!)^n = (-1)^{\frac{n(3n+1)}{2}} (n!)^n $$

を得る。今、$ n = 4k $ ($ k \ge 1 $) であるから、指数部分を計算すると、

$$ \frac{n(3n+1)}{2} = \frac{4k(12k+1)}{2} = 2k(12k+1) $$

となり、これは偶数である。したがって、$ (-1)^{\frac{n(3n+1)}{2}} = 1 $ である。さらに、$ n = 4k $ は偶数であるから、

$$ (n!)^n = (n!)^{4k} = \left( (n!)^{2k} \right)^2 $$

は整数(したがって有理数)の完全平方である。以上より、判別式は

$$ \Delta(g_n) = \left( (n!)^{2k} \right)^2 > 0 $$

となり、$ \Delta(g_n) $ は $ \mathbb{Q} $ における平方元である。

ステップ 3: Galois群の決定

判別式 $ \Delta(g_n) $ が $ \mathbb{Q} $ の平方元であることから、Galois群 $ H = \operatorname{Gal}(M/\mathbb{Q}) $ のすべての要素は偶置換として表現でき、$ H \subset A_n $ が成り立つ。

$ H $ は $ S_n $ の推移的部分群であり、$ n/2 < p \le n-3 $ を満たす素数 $ p $ に対する $ p $-巡回置換を含むことが(Dedekindの定理等から)知られている。したがって、Jordanの定理(定理 A)より $ H $ は $ A_n $ または $ S_n $ を含む。$ H \subset A_n $ であることと合わせると、

$$ H = A_n $$

が厳密に結論づけられる。

理解を深めるための具体例 ($ n=4 $)

$ E_4(x) = 1 + x + \frac{x^2}{2} + \frac{x^3}{6} + \frac{x^4}{24} $ であり、$ g_4(x) = 24 E_4(x) = x^4 + 4x^3 + 12x^2 + 24x + 24 $ である。
判別式を公式に代入すると、$ n = 4 $ ($ k = 1 $)より、

$$ \Delta(g_4) = \left( (4!)^2 \right)^2 = (24^2)^2 = 576^2 = 331776 $$

となり、正の完全平方数となることが実際に確認できる。$ g_4(x) $ は $ \mathbb{Q} $ 上既約であり、そのGalois群は4次交代群 $ A_4 $ に同型である。

参照文献・関連文献

これらの結果はIssai Schurにより1930年代初頭に証明され、その後多くの数学者によって一般化や別証明が与えられてきた。以下に主要な文献を挙げる。

追加